の  す  ぐ  後
 
中編

「ん……」

小さな吐息を洩らして、角度を変えながら何度も何度も口付ける。情熱的に舌を入れてきたと思ったら、ストイックに唇に触れるだけになったり、下唇を甘噛みされたり……今はまだキスの段階だというのに、ありとあらゆる愛撫をされてるみたいでなんだかひどく興奮する。

桂木は閉じていた目を薄っすらあけて、田嶋の顔を盗み見た。目を瞑って口内を貪る田嶋のその表情はたまらなくセクシーだ。

桂木は再び目を閉じると、田嶋の黒い髪を掻き乱した手を肩にスライドさせた。唇が繋がったままの状態で、今度は田嶋を押し倒す。さっきまで答えるだけだった唇は、激しく求める口付けに姿を変えた。

ふうん、と鼻にかけるような甘えた息遣いが桂木の耳を刺激する。至近距離に唇を離すと桂木はゆっくりと、掛けていた眼鏡を外した。眼下で、興奮気味に息を上げた田嶋が少し目を細めて口角を上げる。目を合わせたまま同じように桂木は笑みを浮かべた。

「あっ……」

再び激しく唇を求めた桂木の口が、今度は田嶋の耳を愛撫し始める。耳の形をなぞるように舌を這わせると、田嶋の身体がビクッと揺れて、耳元で立てられた淫らな音が、田嶋の身体を更に昂ぶらせた。耳を吸った桂木の口がゆっくりと首筋に移ると、肩に回された田嶋の両手が桂木のネクタイを緩めて、器用にシャツのボタンを外し始める。再び桂木が口を吸った。

「……ふ……ん……」

白いシャツの上から身体のラインを滑るように流れた手の動きに、田嶋は焦れたように声を洩らした。その懇願めいた視線に桂木は満足気な微笑を浮かべると、手探りでシャツの下の突起を探りあてる。シャツの上からでも敏感になった身体は充分に感じて、眉をひそめた田嶋が小さく熱っぽい息を吐いた。乱れた衣服が興奮を誘う。

首筋を吸いながら、シャツの下へと指を侵入させる。桂木の形の良い指先が固くなった乳首に直に触れると、思わず田嶋は声を上げた。

「ふ……っ」

田嶋の手が、桂木のズボンのベルトに手を掛ける。その瞬間、桂木の手がそれを止めた。どうして?と意外そうな顔をした田嶋が頬を上気させて桂木を見つめた。

「ダメ」
「え…して……欲しくないんですか?」
「後で」

そう言うと桂木はズボンの上から田嶋の中心にいきなり触れて、突然のその衝撃に田嶋の身体がビクッと震えた。

「あっ……!」

行為自体が久しぶりではあるけれども、今日はしてもらうより先に田嶋に触れていたくてしょうがない。長いこと待たせた最愛の男なのだ。めちゃくちゃ気持ち良くしてやりたい。

右手のひらで田嶋自身を愛撫しながら、左手で襟もとの乱れたシャツをめくる。桂木は顕わになって、固くなった田嶋の乳首に軽く歯を立てた。

「んっ……!」

田嶋は身体を震わせながら、口元に左の甲を押し当てる。ズボンの下で愛撫された田嶋の下半身は先走りでびしょ濡れで、ひそめた眉から淫靡な表情が伺えた。

熱いため息を洩らして、田嶋は桂木の袖を掴んだ。田嶋のキレイな指先がみるまに白くなって、桂木はきつく閉じられた濡れた目蓋にそっとキスを落とすと、なれた手つきでベルトを外す。躊躇のない桂木の手がぎゅっと田嶋のモノを直に握った。

「ああっ……!」

上げた声が桂木の口で塞がれると、その息苦しさに田嶋は酔った。好きで好きでたまらなかった目の前のこの男が、全部の男を捨てて自分を求めているのだ。興奮しないわけがない。

激しく唇を求めた桂木のその舌が、がゆっくりと耳へ、首へ、胸へ、腹へ……そして田嶋自身へと到達する。

「すげぇ」

びしょ濡れだ、と桂木は笑った。そう言った桂木自身も触れられてもいないくせに結構なびしょ濡れで、思わず苦笑したい気分にもなる。田嶋と目を合わせてニヤッと笑うと、その先端に桂木の舌先がチョロっと触れた。ビクッ!と身じろぎをした田嶋に顔をうずめて、もう目の前にあるセックスを桂木は一気に口内へ飲みこんだ。

「あっ……!!」

短い悲鳴を上げた田嶋に、桂木はいきなり上下に早く深く口を動かす。口内のそのねっとりとした感触と、手で与えられるその刺激に、田嶋の口から喘ぎ声が上がった。

「あっ、あっ……、や……っ」

切なげな表情をして田嶋は目を伏せた。この顔も声も指も身体も、その全てが!どんなに桂木を挑発するのかだなんて、本人はちっとも気づいていやしない。更に動きを加速させると ああっ、と小さな声を上げて、桂木の口内であっけなく田嶋は達してしまった。

「はぁっ、はっ……」

肩で息をした田嶋の頬に桂木はチュッ、と唇を落とした。薄っすらと目を開けて、横目で田嶋は桂木を睨むような表情で見つめる。

「早い、です……」
「良かったろ?」
「そりゃあ……」

良かったけれど、もうちょっと楽しませてくれても……。押し倒された格好のまま覗きこむように桂木に見られて田嶋は言葉を飲みこんだ。と、そこで。

「……何やってんですか?」
「んー」

田嶋の上に乗ったままスーツの上着に手を伸ばす桂木に、田嶋は不審気な表情を浮かべた。しばらく内ポケットを探って、どうやらブツが見つかったらしい。桂木が中ぐらいのボトルを田嶋の目の前にちらつかせた。

「何です、それ……?」

何の文字も書かれていない、透明なボトル。中には透明で粘液質な液体が……。

「……まさか」
「そう、まさか」

田嶋は驚いた顔をして、慌てて上半身を起こした。

「ちょっ、ちょっと!俺そんなすぐ無理です!」
「無理?」
「無理!」

桂木の目の前に手のひらをかざすと、田嶋は間髪入れずに悲痛な断りの言葉を口にした。久しぶりの興奮を味わって、今達したばかりのこの肉体ではすぐさま桂木を受け入れるには辛すぎる。真剣な顔をして桂木が田嶋の顔をじっと見つめた。

「…………」

物言わぬ桂木の真摯な眼差しはただそれだけで田嶋の心を掴んで離さない。怒ったのか?と、まるで伺うように田嶋は顔を傾けて、覗きこむような仕草で桂木の名を口にした。

「……しゅにん?」
「…………」
「…………あの」
「好き」

少し間を置いて返されたその言葉に田嶋の頭は真っ白になった。「好き」。ただその一言が。

滑るような華麗な仕草で顎に手を掛けられる。桂木の顔が10cmもの至近距離に近づくと、もう何もかもがどうでもよくなった。

「好き」

桂木の口が田嶋の唇に触れて、そのまま激しい口付けに変わる。さっき射精したばかりの下半身がすぐさま熱を帯びるのに、そう時間はかからなかった。

「好き」

田嶋はゆっくりと目を閉じた。愛しい男の愛の言葉は千の媚薬も敵わない。桂木の手が乱れた田嶋のズボンにかかり、慣れた手つきで降ろされていく。

「好き……。好き、好き、好き、好き……」

まるで確認でもするかのように何度も何度も囁かれる愛の言葉は、みるみるうちに田嶋の心を冒す。押し倒されたことにも気づかない。

「好き……」

何度目かの囁きの時、田嶋の身体がビクッと揺れた。ゼリーで濡れた桂木の指先が、田嶋の入り口の周りをなぞるように這う。

「……ぁあ……っ」

指の第一関節部分ほどの長さが入り口を行ったりきたりと小刻みに細かい刺激を与える。甘い吐息を吐き出して、田嶋はその部分に意識が集中するのを感じた。

「……っ、ん」

ストーブで高くなった室温と内からの興奮で額が汗ばむ。指先で程よく慣らされたその場所に、桂木の中指がクチュッと淫らな音をたてて、一気に奥まで吸いこまれた。

「あっ……!!」

眉をひそめた田嶋の顔はとても淫靡で見ている桂木の背中をゾクゾクさせる。その顔をもっともっと乱してみたい。

桂木は乾いた上唇をペロリと舐めた。指をゆっくり爪の先まで引きぬくと、一瞬おいてまた奥まで入れる。田嶋の大好きな指使いだ。それを数回繰返し、その度に田嶋の口から熱い喘ぎが洩れた。

「んん……ん……」

身体中にもキスを落とす。やがて緊張していた入り口が指の刺激に慣れるころ、桂木の中指が徐々にスピードを上げ始めた。

「あっ……あっ、あっ!」

激しくなった指の動きに田嶋の声も高くなる。桂木は手慣れた動作でゼリーを足すと、指の数を一気に増やした。

「ひっ!」

田嶋は息を飲んだ。熱くなった先端から透明な雫がポタポタと溢れ出す。桂木は左の親指でそれに触れると広げるように指を回した。田嶋の身体がビクッと揺れる。手のひらがそのまま田嶋を包み込むと、上下に動いて田嶋自身を扱き始めた。

「あっ、あっ……!」

田嶋の声と、グチュグチュと立てられた音が静かな室内に響いて一層行為を淫らなものに感じさせる。前と後ろを責めたてられて、田嶋は桂木に懇願の表情を覗かせた。

「…しゅにん、……もう……」

袖を掴んだ田嶋の指がブルブルと震える。桂木だってもう待てない。片足を肩に持ち上げると、桂木は先走りとゼリーで充分に濡れた自身を入り口に押しあてて、一気に田嶋の中へと押し入った。

「……っ!!」
「は……」

奥まで自身を入れ込むと、桂木は小さく息を吐いて眼下の田嶋を見下ろす。顔のすぐ横に置かれた桂木の手が、なんだか妙にエロティックだ、と田嶋は思った。

「入れてるだけなのに、すげー気持ちいい……」

汗ばんで濡れた額に張り付いた田嶋の髪を散らすようにかきあげると、桂木はゆっくり腰を動かした。

「んっ……」

乱れた田嶋の身体を下に、桂木は徐々にスピードを上げる。突き上げる度に田嶋の淫靡な声が響いて、その声だけでもうイキそうだ。左手の甲で口を抑えた隙間から僅かに洩れる声が、桂木を更なる興奮の波に誘った。

「あっ、……あ…はぁっ、はぁっ…」
「はぁ、はっ……」

畳の音がキシキシ鳴って、桂木の息も上がる。自分から洩れた息遣いにマズイなあ、と桂木は思った。入れてまだちょっとしか経ってないのに、こっちの方がもうダメそうだ。久しぶりということもあるけれど、それ以上にめちゃめちゃ気持ち良すぎて、気を抜くとすぐにも出してしまいそうだった。なんだかすごく勿体無い。

少し動きを緩めて、田嶋の唇にキスを落とす。口を離すと桂木は、上半身を起こして田嶋の左手を引っ張った。入れたまま田嶋の上半身を起こして桂木の上に、座ったままの格好にさせる。頭一つ分上にある田嶋が桂木を見下ろしてその形の良い唇を指でなぞると、後を追うように桂木は口を重ねた。答えるように開かれた唇から、探るように舌が入ってきて、口内を侵す唾液の音が頭の中でクチュクチュ響く。

「ん……」

肩に回された田嶋の両手がもっと、とねだるように桂木の色素の薄い髪を掻き乱して、口の端から漏れた唾液が桂木の顎を濡らす。口が繋がったまま、桂木が下から腰を突き上げると、田嶋の口から短い悲鳴が上がった。

「あっ!」

下から見上げる田嶋の顔は妖艶で、ひどく桂木を興奮させる。深く入れこまれた部分に、桂木が何度も何度も激しく腰を動かすと、その突き上げられる快感に田嶋は頭を仰け反らせた。

「あっ、ああ……」

桂木は下腹部にある田嶋のモノを手のひらで扱き始める。同時に田嶋の声も激しく上がった。

「あっ、あっ、あっ!!……はぁっ…、はぁっ……」
「ん……っ」

自身を締めつけられたような気がして思わず桂木も声を洩らした。動きをどんどん加速して行くと、肩に置かれた田嶋の両手に力がこもる。仰け反っていた頭が肩にかかり、田嶋は抱きつくように桂木に腕を回した。その表情は甘くて切ない。

「あっ、ああっ……主任、俺、もう……ッ」

耳元で搾り出すように田嶋が掠れた声を上げると、桂木は田嶋を倒して本能のまま、激しく田嶋を突き上げた。

「あッ、ああっ、あ…… ―――ッ!!!」

田嶋の先から白い精液が勢い良く放出されて、自身の腹部と胸部を汚す。それより一瞬遅れて桂木も田嶋の中に欲望を吐き出した。ドクドクと脈打つ鼓動が身体中を駆け巡る。

「はぁっ、はぁっ……」

どっちの息遣いなのかも分からない。田嶋は、すぐその目の前の恋人の頬に撫でるように触れた。

「……興奮、しました?」
「すげぇした……」

肩で息をして桂木は田嶋の中に入っていた分身を引き出して、その感触に田嶋が小さく喉を鳴らす。田嶋は少し物憂げな表情を浮かべると、下から額に張りついた桂木の前髪をかきあげた。

「風呂、沸いてますよ。入ります?」

耳元でそう言うと、桂木は田嶋を見てニヤッと笑った。

「一緒に、入ろう」

耳元でそう言うと桂木は田嶋に軽くキスを落とした。

 


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