スピリチュアル

柔らかなライトの下に照らされたシーツの上に、押し倒された田嶋の瞳がひどく不安げな色を浮かべてこちらを見ていた。そのいたいけな表情に桂木の胸も痛くなる。

桂木は右手のひらで、田嶋の前髪を撫でるように掻きあげると、露になった額にそっと口付けた。触れた右手が頬に移動して、その反対側の頬にもキスを落とす。緩やかな速度で顔を離すと、ずいぶんな至近距離にある、田嶋の閉じていた双眸がゆっくり開いて桂木 の顔を見つめた。

(爆発しそうだ……)

心臓が早鐘のように高鳴って、その音が桂木の耳にまで聞こえてしまいやしないかと田嶋は思った。

合わさった視線に桂木は薄い微笑を浮かべて、細い銀のフレームを外すと、今度はその良く形の整った唇に口を重ねる。ゆっくりと角度を変えて、今度は触れた田嶋の唇を弱い力でチュっと吸った。少しだけ開いた桂木の口の隙間から、舌先が田嶋の唇にそっと触れる。それに応じるように、田嶋の口が誘うように桂木の舌を招きいれた。

「……ん……っ」

桂木は田嶋の口内を舌で、歯で、あるいは唇で、丁寧な動作で愛撫する。まるで壊れものを扱うような、触れるだけのナイーブな接吻は、次第に官能的な大人のキスへと姿を変えた。少しの明かりと、時折擦れるシーツの音と、二人の吐息とが静まり返った部屋を満たす。

田嶋の口から唾液のしずくが落ちる頃、桂木はゆっくりと眼下のその顔をじっと見つめた。田嶋の瞳が、開いてこっちを見ていたからだ。

「何」
「いえ……。久しぶりなのに落ち着いてますね」

桂木は田嶋に覆いかぶさったまま左手の親指で、口からこぼれたしずくを拭った。

「虚勢だろ」

桂木は苦笑を浮かべる。桂木だって、もう一杯いっぱいだったのだ。田嶋の顔を見てるだけで、うっかりしてるとこっちがイってしまいそうになる。桂木は田嶋の耳に口を寄せた。

「お前はどうよ」

耳元で低く囁かれて、田嶋の身体はビクッと揺れる。桂木はふっと耳の穴に息を吹きかけると、そのまま耳たぶに軽く歯を立てた。

「あ……」

ゾクゾクする――――。

田嶋の身体に震えが走った。桂木との距離の近さを十分過ぎるほど認識させられ、それ以上に耳のすぐ傍で立てられる唾液の音の淫猥な響きが、田嶋の聴覚を否応なしに刺激する。上腕のシャツを掴んだ田嶋の指に力が入った。

桂木は田嶋のネクタイをひどく手馴れた動作で緩めると、今度はシャツのボタンに手を掛ける。音を立てるほどの激しいキスをしながらもその指はひどく冷静で、シャツのボタンもホックのよう 見えた。

首筋を撫でていた桂木の左手の中指が、スーっとシャツの上を伝い、田嶋の胸の突起でその指を止める。

「……っ」

田嶋は眉を潜めると、小さな声を口から漏らした。桂木はそんな田嶋の反応を楽しみながら、中指をその上でくるくると円を描くように回す。

「うん……」

焦れたような声を上げて、半ば懇願にも良く似た田嶋の顔はダイレクトに桂木の下半身を刺激する。もうちょっと焦らしていたいけど、こっちの方が焦れてしまいそうだ。

桂木は軽く上唇を舐めると、止めてあったその指先で田嶋の乳首をキュッとつまんだ。

「あ!」

田嶋の身体が大きく反りあがり、指と乳首の間でこすれるシャツの感触に背筋が震えた。 桂木の唇が首筋を伝って、反対側の胸にも触れる。田嶋の両手が頭に触れて、そのまま桂木の髪を荒くかき乱した。胸の突起に2、3度軽く歯を立て吸い上げると、田嶋の口から吐息が漏れる。

「ああ……」

桂木の唇は更に下へ下へと、時には舌を這わせてまっすぐな勢いで下がっていく。舌先がへその横まで来ると桂木は、左手で田嶋の靴を靴下ごしにスッと抜き取った。それはとても鮮やかなスピードで、ひどく手馴れた動作を感じさせた。跪くように桂木はベッドから身体を下ろすと、反対側も同じようにして脱がす。跪いた桂木に向かい合うように田嶋は上半身をベッドに起こすと、何か言いたげな顔立ちで裸足になった片足をベッドの上にキシっと置いた。後2つボタンを残した白いシャツから裸の前身が覗いて、下から見ている桂木をクラクラさせる。

桂木はベッドに載せられた田嶋の左素足にそっと触れた。ビクっと身体を揺らして、驚いたような視線で桂木を見つめる。桂木はベッドの下から視線を合わせてニヤっと笑うと、足の方へと視線をやった。

指のはらで間接を伸ばすように、触れるような力加減で指を2、3度指先を引っ張る。親指と人差し指の間に指を入れると、触れられたその部分が反射でビクッと震えて、慌てて田嶋は足を引っ込めようとした。しかし、桂木はもう片方の手を出して、その足先を逃さない。

「あ……!」

開いた桂木の口が、田嶋の足の親指に軽く歯を立てる。驚く田嶋の声なんかおかまいなしに、その口から追うように、舐める舌の丁寧な感触が続いた。

「ちょ、ちょっと、そんなとこ……」

制そうとする田嶋の言葉は、敏感な足先の興奮に消された。同時に、なんだか無性に恥ずかしい。田嶋は震える右手を口に当てると、その奥からくぐもった声を出した。

「や……っ」

桂木は下から見上げる目線で田嶋の顔に視線を送る。良いだろ?といわんばかりのその顔は、田嶋の羞恥心をひどく煽って、その官能的な表情は田嶋の視覚をもゾクゾクさせた。

唾液の糸を引いて桂木が口を離すと、足を支えていた桂木の右手が、スーッと田嶋の足を伝う。ゾクっと背筋を逸らして、胸が大きく高鳴り、すぐに来るであろうその快感に田嶋は身体を固くする。その予想どうりに間もなく、桂木の左手は田嶋の中心部へとたどり着き、何の迷いもなしにいきなり田嶋のセックスにぎゅっと触れた。

「あっ!」

田嶋は両手で慌てて口を隠した。自身の声にもひどく驚いたのだ。

「あっ…、あぁ……」

弄られる手の感触に、スラックスの上からだというのに田嶋の先端から先走りが見る間に溢れてスーツを汚した。田嶋は目を閉じて眉を潜めると、口を塞いだ両手を身体の後ろにゆっくりついた。キシっと小さな音を立てて、ベッドが軋む。

「ベルト、外して」

桂木の囁きが下から聞こえると、田嶋はその言葉に従うように、自身のベルトをゆっくり外した。バックルの金属音が田嶋の耳の辺りをぞくぞくさせる。桂木は目を細めて微笑を浮かべると、外されたベルトの下のスラックスへと手を伸ばした。

ファスナーを下げる音が、何かの秒読みカウントダウンのようにも思えて田嶋の心臓をドキドキさせる。やがて、ファスナーが完全に下りきった音と同時に、桂木の手が田嶋のスラックスを下着とをスッと下ろした。

「足、開いて……」

桂木の言葉に導かれるまま。田嶋はベッドの上に両足を載せゆっくりと足を開いた。俯けた田嶋の顔を見上げながら桂木は、そっと、右手の手のひらでもう何の障害物もない田嶋自身を優しく包んだ。

「ん……」

触れられた自身の先から先走りが滲み出る。それはひどく甘美な蜜の匂いで、桂木を甘く誘うハチミツみたいだ。

桂木は先出た透明の粘液を親指でその先端に広げて、2、3度ゆっくり田嶋を扱くと、今度は舌を使って優しく愛撫し始める。その刺激に田嶋の先から新しい蜜が溢れて、自身を伝ってポタポタ落ちた。その蜜をこぼさぬようにと、桂木は田嶋のセックスを口内へと誘い入れる。

「……っ」

背中が少し反り返って、田嶋の身体がビクリと揺れた。顰めた眉から色気も漂う。桂木は口内に田嶋を咥えたまま先端の部分を舌で円を描くように軽くなぞると、今度はぐっと奥まで口を動かした。

「あっ」

小さな声を上げて目を伏せた田嶋は、口に入れて大したテクニックを使う間もなく、ものの数分も経たないうちにいともあっさり達してしまった。小さく息を上げて呼吸する田嶋の身体は前が肌蹴たシャツと、左手の時計しか身につけられていなくて、全部裸でいるよりも、ひどく扇情的にすら見える。

口元を右手のひらで拭いながら、無表情な顔立ちのままこっちを見ている田嶋の目線に身体を立てると桂木は、ゆっくりと田嶋をベッドへと押し倒した。低いトーンで言って聞かせる。

「もう二度と」

桂木の右膝がシーツに沈み、ベッドのスプリングがキシっと音を立てた。

「疑う余地がなくなるぐらい愛してやる」

そう言って桂木は田嶋の唇にキスを落とした。

 

*    *    *    *    *

 

2週間ぶりの田嶋とのセックスはめちゃくちゃ萌えた! ベッドで3回、風呂場で2回……尤も、いつも携帯してるゼリーが途中で切れてしまったので全戦挿れたわけではないけれど、田嶋のサービスが素晴らしく充実してて、もう十分過ぎるほどの満足を覚えたのだった。やっぱり田嶋は 最高だ。

昨晩の情事を思い出して、桂木はベッドでタバコを吸いながらニヤニヤと笑った。そんな上機嫌の桂木にあっさりと水を差したのは、シャツに袖を通した愛しの田嶋だ。

「もうそろそろ出なきゃいけませんね」

出ないといけない……無論、昨日田嶋が桂木を連れ込んだホテルから、である。

昨夜の情事の余韻もどこへやら……すっかり冷め切った顔をして、シャツの袖のボタンを締めながら田嶋は淡々とそう言った。ほとんど身支度を完了させた田嶋とは対照的に桂木は 、しかも裸でベッドの中だ。

「あー、昼まで寝ててー。昨日誰かさんに頭に血、昇らせてこんなトコに連れ込まれたからなぁ」
「はいはい、俺が悪かったんですよ。すいませんね、謝ります」

田嶋は桂木の方に背中を向けたままで素っ気無く、 悪いと思っている気はさらさら感じられない。そこには、ドライでクールないつもの田嶋がそこにいたのだ。

桂木は吸っていたタバコを枕もとの灰皿に押し当てて、ごろっとベッドのシーツに頬をつけてうつ伏せた。そしてその素っ気無い背中に向かって桂木は、微笑を浮かべてこう言ったのだ。

「田嶋さあ、俺とセックスするの、好き?」
「なんですか、突拍子もなく……」

田嶋は眉間にしわを寄せ、不審な顔をして振り向いた。

「言えよ」

対する桂木はそんな田嶋の様子などお構いなしで、勝気な笑顔を浮かべて言う。怪訝な表情を浮かべたままの田嶋は何かを言いかけて、口を閉ざした。けれども、数秒経って再び口を開いたのだ。

「……好きですよ。ないと、困ります」

分かってるくせにと、田嶋は迷惑そうな顔をして、またさっきのように背中を向こうへ軽く向けた。

「ふうん、へえ、そうー……」

ひどく満足な解答に、桂木の顔は無邪気な子供のようにほころんだ。嬉しくて仕方がない。それで勢いにでも乗ったのか……桂木はひどく意外な言葉を口にしたのだ。

「なあ、田嶋」
「はい?」

桂木は微笑を浮かべたままゆっくりとこう言った。

「一緒に暮らさないか?」



 


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