■ ショートランデブー ■


花丸商事の営業部では毎週週末に決まって業務の報告会がある。「報告会」、と言っても何も別段ご大層なことはない。営業各チームで行われる、極々内輪のメンバーで、今週の売上実績であるとか、来週の予定であるとか……とにかく、所属しているチーム内で定例に行われている簡単な業務の報告のことなのだ。尤もこれをしないと、長であるチームの責任者が全体の動きを把握できない。そして、田嶋が所属している桂木の営業チームは、大抵いつも午後イチからの始まりで、それはいつでも変わらなかった。

 

昼食を食べ終わってすぐ、田嶋は数枚の書類を持って会議室のドアを開けた。まだ会議まで20分以上もあるのに、時間に几帳面な田嶋の性格は入社当時のそのままだ。

「あ……」

田嶋は躊躇いがちに、少し意外そうな声をあげた。

少し広めの8畳といった感じのこじんまりとした会議室で、ちょうど学校の黒板くらいあるホワイドボードを背に、桂木が左手を机の上で拳を握っている。おまけに何やら難しい顔をして目を細めていたのだ。ところがよっぽど難しい考え事をしているのか、入室してきた恋人にも気づかない。田嶋の見ているその目の前で、桂木はゆっくりと両目を閉じた。

(仕事でトラブルでもあったかな……)

田嶋が書類を机に置こうと桂木の背後に回る。そこで田嶋は思わぬことに、意外な光景に直面したのだ。

「……?」

さっきまでの険しい顔はどこへやら、その顔立ちは田嶋の目の前で、みるみるうちに穏やかな表情に変わっていく。自分の存在に気づきでもしたのか、と田嶋は覗き込むように桂木の方へ顔を近づけた。

「………」

そこであろうことか、田嶋の視界にうっかりと入ってしまったのは、その穏やかな顔でなく、桂木の耳。田嶋の動きはそこで止まった。そういえば昨日、すごい勢いで耳に噛り付かれたっけ……。田嶋は昨晩の情事をぼんやりと思い起こした。尤も耳を責められると自分が如何にいい声を出しているのかだなんて、当の御仁は少しも気づいていやしない。

「…………」

別に、昨日のお返しと言うわけではないけれど。

田嶋は目をちょっと細めると、桂木の耳めがけて息をフッと吹きかけた。

………………無反応。

桂木にしては珍しい反応で、自分に気づいたのであれば、絶対に堪えられない美味しいシチュエーションだと思うのだが?

田嶋は上唇を舌で湿らすと、そのまま桂木の耳に口を近づけた。誰もいない密室で、ちょっとした冒険心をかきたてられる。田嶋はさっきのようにではなく、今度は狙って扇情的に息を吹きかけた。口から出でた赤い舌が、桂木の耳のその曲線に沿って、ゆっくりと移動する。耳たぶに軽く歯を立てると桂木の身体がぴくっと僅かに動いて、蚊の鳴くような小さな声が口から洩れた。

「ん……」


なんつーことなのですか。から様からの頂きものには実に美味しいオマケがついていたのですよ…!!

ゴー、ホモゴー!!

 

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